Webサイトのローカライズとは?成功の秘訣と事例5選
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近年、グローバル化が進む中で、世界中のビジネスが海外展開を視野に入れ始めています。これに伴い、「ローカライズ」がますます重要性を増してきました。
Webサイトのローカライズは、特定の地域や文化に合わせてコンテンツを調整するプロセスであり、企業やブランドの国際的な成功において欠かせません。
この記事では、Webサイトのローカライズの方法について解説します。企業が海外展開する際、方針やサービス内容だけでなく、SNSコンテンツやWebサイトも現地の言語やマーケティングに合わせることが大切です。実際の事例を取り上げながら、ローカライズのポイントや効果的な手法を紹介します。
Webサイトのローカライズとは何か
ウェブサイトのローカライズとは、ターゲット市場の文化や言語に応じて内容やナビゲーションを最適化することです。重要なのはユーザー体験の向上であり、CSA Researchの調査によれば、65%の消費者が母国語のサイトでの購入意欲が高まると回答しています。
翻訳とローカライズの違い
ローカライズと翻訳は別物で、文化的な違いへの配慮がポイントとなります。例えばアジアとヨーロッパの市場では、顧客への接し方や法的条件、購入の習慣が異なるため、文化を無視して商品を提供すると、ユーザーに不快感を与えてしまうかもしれません。
Webサイトを上手にローカライズする秘訣
Webサイトのローカライズは、具体的な要件や文化によって異なる場合もあるため、適切な調整が必要です。
- ターゲットユーザーと現地市場の調査
- 翻訳作業
- デザイン・レイアウト
- 地域カスタマイズ
- SEO(検索エンジン最適化)・アナリティクス
- 最終段階
順番に見ていきます。
ターゲットユーザーと現地市場の調査
年齢、性別、職業などを具体的に定めて、サービスを効果的に提供するための基盤を整えます。対象とする地域や国に応じて、ローカライズすべきコンテンツの範囲の特定が必要です。その上で、コンテンツ制作やカスタマーサポートに割ける予算やスケジュール、リソースを決定します。
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現地のネイティブスピーカーに翻訳を依頼
翻訳は、現地のネイティブスピーカーに依頼するのをお勧めします。現地の表現やニュアンスを正確に伝えることができるからです。文化的理解と習慣調査を通じて、ターゲット地域の文化、価値観、ビジネス慣習を理解し、サービスの優先事項やニーズを把握します。
多言語化を踏まえたデザイン・レイアウト設計
デザインとレイアウトを調整します。言語によっては文を右から左へ読んだり、特定のフォントが必要だったりする場合があります。また日本語の文章は、英語に翻訳するととても長くなるので要注意です。
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国民性を考慮した地域カスタマイズ
法律、規制、文化的違いに対するカスタマイズを行います。支払い方法や価格表示、法律的免責事項などがこれに当たりますが、国によってはサービス提供の可否を左右するほど重要です。
ターゲット地域でのSEO(検索エンジン最適化)・アナリティクス
ターゲット地域での検索傾向やキーワードに合わせてコンテンツを最適化します。
現地パートナーからのフィードバックをもとに調整
ウェブサイトのテストとフィードバックを行います。ユーザーテストや現地パートナーからのフィードバックを収集し、必要に応じて修正や改善を行います。修正後、ウェブサイトを公開し、ユーザーの行動を計測し、必要に応じて調整を行います。
以上がローカライズの大まかな手順でした。
日本企業のWebローカライズ成功事例
国や文化に応じた好みやデザインは、サイトや製品の成功にとって重要な要素です。情報の配置や色の選択を各国の文化に合わせることで、ユーザーの印象や体験が大きく変わります。
海外向けにローカライズを行った日本企業のWebサイトの例を見ていきましょう。
ダイキン工業株式会社
ローカライズの成功例のひとつ目は、ダイキン工業株式会社です。同社は事業を170カ国以上で展開しており、各国の市場に合わせてデザインとコンテンツを調整しています。
例として、ダイキンの日本とイギリスのウェブサイトを比較してみましょう。
ダイキンは市場ごとに異なるアプローチを採用しています。日本のサイトでは商品の注目ポイントを前面に押し出し、スクロールで詳細情報が見られるデザインです。
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参考
一方、イギリス向けのサイトでは、商品の価値やメリットを詳しく紹介し、新しいユーザーの関心を引く内容が展開されています。これは、イギリスにおけるダイキンブランドの知名度や市場での位置付けによるもので、異なる戦略が求められたからです。
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参考
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社のWebサイトでは、日本版とアメリカ版を比較します。両者でデザインの違いが顕著に現れています。
日本版はスライドショー形式のトップ画像で広告やコンテンツを伝え、販売車紹介がシンプルにわかりやすく配置されています。
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参考
一方、アメリカ版はドラマチックな映像で視覚的なインパクトを強調し、画像を多用して情報を視覚的に伝えるアプローチを取っています。このアプローチは、ユーザーの視覚的な魅力に訴えかけて商品やブランドの魅力を引き立てる効果がありそうです。
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参考
ソニー株式会社
ソニーは1964年に設立され、トランジスタラジオのような画期的な製品を次々と生み出し、電子機器業界で急速に成長しました。この製品戦略により、海外でも高い評価を受け、現在につながる国際的な成功を築くに至ります。
SONY Japanのウェブサイトをスクロールすると、さまざまなコンテンツのバナーが目に入り、ページ下部には最新のニュースが掲載されています。日本版のサイトは情報が豊富で、使いやすいグローバルナビゲーションも特徴です。訪問者はファーストビューでサイト内容を把握し、製品やページへ容易にアクセスできます。
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参考
SONY UKのウェブサイトは、3本線のドロワーメニューを採用しており、スマートフォンなどの小さなデバイスでも見やすいデザインになっています。国ごとのユーザーの利用傾向やデバイスの使用状況を考慮し、デザインを調整することが重要であることが伺えます。
トップページのキービジュアルには写真が1枚だけ使用されています。日本のように、複数のビジュアルがスライドして切り替わる仕様ではありません。これは、その地域でのヒット商品や注目商品を強調するための手法としてよく採用されます。
また多くの海外サイトで見られるように、SONY UKのサイトも写真中心で文字情報は控えめなデザインとなっています。
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参考
海外企業のWebローカライズ成功事例
ここでは海外企業が行ったWebサイトのローカライズ事例を紹介します。
マクドナルド株式会社
マクドナルドはアメリカ発のファストフードチェーンで、効果的なフランチャイズモデルや経営戦略により急成長してきました。国外に展開する際にはもちろん、Webサイトのローカライズを行っています。
例えば、アジア圏のマクドナルドは地域に馴染んで好まれやすい「特別メニュー」が展開されており、2023年8月の日本版サイトでは「ハワイやんバーガーズ」や「さむらいマック」などが魅力的に宣伝されています。
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参考
一方で、アメリカのマクドナルドのWebサイトには、アジアのような地域特別メニューはありません。サイトの色彩も日本に比べて豊かではなく、マクドナルドのシンボル的なカラーである赤と黄色を主体としたシンプルなデザインとなっています。
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参考
オーストラリアのサイトも見てみましょう。ファーストビューには、空に手書きの文字で「We’re on it」と書かれた写真が使用されています。
「(マクドナルドに)任せて!腹ペコならおいで」とメッセージでユーザーの食欲を刺激した直後に、オーストラリア限定メニューの「Cheesy Angus」「Cheesy Beef」などのチーズがとろけるビジュアルで訴えるのが、オーストラリアに合ったWebサイトの構成のようです。
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参考
地域の好みや文化を配慮しながら一貫したブランドイメージを保てているのは、マクドナルドのローカライズがうまくいっている証拠ですね!
株式会社ナイキ
ナイキは1964年に創業されて以来、世界各国に支店を展開してきた有名なスポーツブランドです。スポーツアパレル、シューズ、アクセサリーなどの製造・販売を行っており、トレンディなデザインと独自のマーケティング戦略を駆使して、世界中で愛されるブランドとなっています。ナイキの各国のウェブサイトを比較してみましょう。
こちらは中国のWebサイトです。冒頭にはメンバーシップの広告が、写真、イラスト、QRコードのセットで配置されています。スポーツブランド「NIKE」のポップで活気ある雰囲気を伝えつつ、会員登録を促す意図が見て取れます。ファーストビューでアプリユーザーを増やす戦略でしょうか。
ちなみに、中国ではWeChatなどからのアプリ登録がよく行われています。こういった背景もおそらく影響しているでしょう。
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参考
続いて、ポルトガルのウェブサイトです。中国版とは異なり、プロモーション動画が大きく配置されています。いろんなスポーツのシーンが映し出される中で、ポルトガルの国技であるサッカーの映像が多く含まれているのはローカライズの一環と思われます。
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参考
アルゼンチンのウェブサイトのファースビューは、ほぼスニーカーの画像だけ。このモデルは「ペガサス40」という40年前に誕生した万人向けのランニングシューズです。何の説明もなく、ランニングシューズの画像だけ出してあるということは、アルゼンチンでかなり人気のある商品なのでしょう。これもWebサイトのローカライズの一例です。
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参考
まとめ
ウェブサイトのローカライズは、ターゲット地域での成功の鍵となります。各地域の特色や言語を深く理解することで、より良いユーザー体験を提供できるでしょう。ウェブサイトは顧客と直接繋がる窓口です。効果的なコミュニケーションを通じて、ビジネスの継続的な発展と成功を実現するための中心的役割を果たします。
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この記事を書いた人
クーシーブログ編集部
1999年に設立したweb制作会社。「ラクスル」「SUUMO」「スタディサプリ」など様々なサービスの立ち上げを支援。10,000ページ以上の大規模サイトの制作・運用や、年間約600件以上のプロジェクトに従事。クーシーブログ編集部では、数々のプロジェクトを成功に導いたメンバーが、Web制作・Webサービスに関するノウハウやハウツーを発信中。
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テキスト:佐藤 有那 デザイン:小林 沙綾