Webアクセシビリティ入門:誰もが使いやすいWebサイトを作るための第一歩
今日、インターネットは私たちの生活に深く根付き、生活の基盤になっていると言っても過言ではありません。そんな中注目を集めているのが、Webアクセシビリティ。
この記事を読んでいる方なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。しかしながら、
「Webアクセシビリティって結局なに?」
「自社もWebアクセシビリティに取り組んだ方が良い?」
「Webアクセシビリティって何から始める?」
などの疑問も抱えているのではないでしょうか。
Webアクセシビリティとは、「障がいを持つ人や高齢者を含めたすべての人にとっての、Webサイトやオンラインツールの利用しやすさ」を指します。
本記事では、Webアクセシビリティの基本概念、なぜそれが必要なのか、Webアクセシビリティのポイントついて詳しく解説していきます。この記事を通じて、Webアクセシビリティの基本を理解し、Webサイトやアプリケーションをユーザーにとってより開けたものにする助けになれれば幸いです!
ぜひ最後までお読みください!
Webアクセシビリティとは
Webアクセシビリティとは、障がい者や高齢者を含めたあらゆる人にとっての、Webサイトやオンラインツールの利用しやすさ、を指します。
よくWebアクセシビリティについての説明で、「障がい者や高齢者の方々でも問題なくWebサイトを使えるようにすること」というのがありますが、これは狭義での説明と言えます。広義には「Webサイトが、障がい者や高齢者のみならず全ての人にとって、利用しやすい状態にあるかどうか」と言えるでしょう。
例えば、電車の中で動画をみたいけどイヤホンがない時、字幕を使って動画で話されている内容を理解しますよね?実はこれもWebアクセシビリティの一つです。「聞こえづらい状況においても、内容がわかるようにする配慮」をしています。
このように全ての人にとって利用しやすい状態にすることを「Webアクセシビリティに配慮する」と言うのです。
なぜWebアクセシビリティが必要なのか
はじめに伝えたいことが、「Webアクセシビリティは基本的に全てのサイトやサービスにおいて取り組むべきものである」ということです。
理由としては、「情報やサービスへの平等なアクセスが求められる時代になっているから」です。
一昔前までは、そもそもインターネットを利用できる人や状況は限られており、サイトやサービスにおいて平等なアクセスに配慮する必要はありませんでしたが、そのような状況も大きく変わりました。
生活のあらゆる場面でインターネットに触れ、若者やビジネスマンのみならず、子供から高齢者まであらゆる年代、そしてあらゆる性別、職業、人種の人がインターネットを利用します。インターネット自体の平等性は(完全ではありませんが)ほとんど達成され、今度はサイトやサービスにおいて平等なアクセスが求められる時代になっているのです。
Webアクセシビリティのメリット
Webアクセシビリティに考慮することで得られるメリットは、主に以下の4つです。
- ユーザーエクスペリエンスの向上
- SEOの対策
- 法的リスクの軽減
- 社会的責任とブランドイメージ
ユーザーエクスペリエンスの向上
Webアクセシビリティの改善は、障がいを持つユーザーや高齢者だけでなく、全てのユーザーにとっての使いやすさを向上させます。例えば明確なナビゲーションや、読みやすいテキスト、簡単に理解できるコンテンツなどは、特定のユーザーでなく、あらゆるユーザーに対する配慮になりますよね。これらの配慮によって、あらゆるユーザーにとっての顧客体験(ユーザーエクスペリエンス)が向上し、サイトの滞在時間やユーザー満足度の改善が期待されるのです。
SEO対策
実は検索エンジンもアクセシビリティを重視しています。適切に配置されたコンテンツや、代替テキスト付きの画像、明確な見出しなどは、検索エンジンにとってもWebサイトを理解するために役立つ情報となり、サイトの理解度を深めます。検索エンジンに「わかりやすい」と判断されることで、結果としてアクセシブルな(情報にアクセスしやすい)サイトと見なされ、検索結果でより高い位置に表示される可能性が高まります。
法的なリスクの軽減
近年、Webアクセシビリティへの配慮が、法律によって求められるというケースも生まれてきています。あまり実感はないかもしれませんが、日本においてもWebアクセシビリティへの配慮は義務と定められており、そのような基準に抵触するWebサイトは、訴訟や罰金のリスクにさらされる可能性もあります。適切な対策を講じることで、企業や組織はこれらのリスクを回避することができるのです。
Webアクセシビリティの義務化に関しては、こちらの記事で解説しておりますので、ぜひこちらもお読みください。
Webアクセシビリティとは?義務でなくても今から取り組むべき理由
社会的責任とブランドイメージ
Webアクセシビリティへの取り組みは、企業や組織が社会的な責任を果たしていることを示すための指標にもなっています。アクセシビリティに配慮されたWebサイトを提供することで、ユーザーに対して肯定的な印象を与え、ブランドイメージの向上につながります。このようにポジティブなブランドのイメージを獲得することで、顧客のロイヤルティを高め、新しい顧客層を引きつけることにも貢献するでしょう。
Webアクセシビリティの基準
アクセシビリティとは利用しやすさである、と述べましたが、その程度はあくまで個人の感覚によるものなので、どの様な設計やデザインが利用しやすいものなのかを決めるのは難しいかもしれません。そこでWebアクセシビリティには評価の基準が設けられています。
Webアクセシビリティの基準として最も広く認知されているのは、W3C(World Wide Web Consortium)によって開発されたWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)です。WCAGは、Webコンテンツがすべての人にとってよりアクセスしやすくなるように設計された一連のガイドラインであり、大きく以下の4つの原則に基づいています。
知覚可能 | 情報とユーザーインターフェースのコンポーネントは、ユーザーが知覚できる方法で提示されるべき。 |
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操作可能 | インターフェースのコンポーネントとナビゲーションは操作可能でなければならない。 |
理解可能 | 情報と操作の方法は理解しやすいものでなければならない。 |
堅牢 | コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢でなければならない。 |
英語を翻訳したもののため、一度読んだだけではあまりイメージが湧きませんが、簡単に言えばそれぞれ、「ボタンや文字の識別のしやすさ」「サイトやサービスの操作しやすさ」「情報や操作方法のわかりやすさ」「デバイスやOSの種類が変わっても問題なくアクセスできるか」という基準のことをさしています。(詳細はこちらからご確認ください:WCAG 解説書のイントロダクション)
これらはWebアクセシビリティの向上に向けた「達成基準」をあげたものであり、現在では事実上の国際基準とされています。
Webアクセシビリティの具体的なポイント
Webアクセシビリティに配慮する際、具体的にどのようなところに配慮するべきなのか。重要なものをいくつか紹介していきます。
【視覚】画像の代替テキスト、コントラスト、フォントサイズ
画像の代替テキスト
サイト内で用いる画像には代替テキスト(altテキスト)を用意することが重要です。代替テキストとは、どのような画像なのかを説明するテキストのことであり、音声読み上げ機能を使う際にはこのテキストが読み上げられます。視覚障がいのあるユーザーでも画像の情報を得られるようにする配慮です。
読み上げ
サイト内のテキストや画像の読み上げ機能にも対応しておく必要があります。読み上げ機能とはその名の通り、サイト内のテキスト(文章や目次、タイトルやセクション名などを含めたあらゆるテキスト)のみならず、先ほど申し上げたように画像の代替テキストも読み上げてくれる機能のことです。
一般的にはブラウザの拡張機能を用いて読み上げが行われるため、正しくテキストが読み上げられるように対応しておく必要があります。
コントラスト
視認しやすさを確保するために、コントラストは非常に重要です。文字色、見やすい色の背景、画像の色などに配慮することで、誰にとっても見やすいサイトへと近づきます。
文字サイズ
文字サイズを拡大・縮小できるようにすることで、誰にとっても読みやすいテキストを用意することが可能です。文字サイズの変更は読み上げ機能と同様、ブラウザの拡張機能によって行われることがほとんどですので、拡張機能に対応できるようにしましょう。
また、レイアウトとフォントのサイズを相対指定することで、どのような場面でも最適なフォントサイズでユーザーによんでもらうことが可能です。
【聴覚】字幕
字幕
ビデオコンテンツには字幕を提供することが重要です。これにより、聴覚に障がいのあるユーザーもビデオの内容を理解できます。YouTubeなどの動画を使用する際は既にキャプションが入れられているので簡単に準備することが可能です。
【操作性】キーボードナビゲーション、音声・視線操作
キーボードナビゲーション
キーボードナビゲーションとは、tabキーを使って、サイト内の要素を辿っていける機能のことです。これによりサイト内のコンテンツをキーボードのみを用いて閲覧・選択することができます。キーボードのショートカットなどもキーボードを用いたアクセシビリティへの配慮であり、身体的に障がいのある人や、視覚に障がいがある人のみならず、全てのユーザーに使いやすさを提供しているものだと言えるでしょう。
音声・視線操作
身体的な障がい、もしくは特殊な状況によりマウスやキーボードによる操作ができない場合、音声や視線での操作が非常に役に立ちます。音声操作では文字の音声入力や、最近ではSiriやGoogleアシスタントのようなアシスタントAIによる操作などをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。視線操作に関しては、アイトラッキング(視線計測)という機能を使うことで、マウスポインターの操作から文字の入力まで行うことができます。
【理解】言語の明瞭さ、テキストリンク
言語の明瞭さ
シンプルで明瞭な言葉を使用することで、コンテンツの理解を容易にします。例えば、記事のタイトルをシンプルでわかりやすいものにしたり、セクション名やリンク名を、変遷先にあるコンテンツがわかりやすいものにしたりなど。ユーザーに誤解を招かない言葉の使い方を意識するのが重要です。
テキストリンク
リンクは、その目的地に何があるかを明確に示すことが大切です。当然、サイト内にただリンクを貼っただけでは、そのリンクを押すことでどこに変遷するのかわかりません。また「詳しくはこちら」という含みのある表現も避けるべきでしょう。「Webアクセシビリティに関する解説の詳細はこちら」のように、目的地を明確にすることで、ユーザーが予期せぬページに誤って誘導されてしまうことを防ぎます。
まとめ
以上がWebアクセシビリティについての解説になります。
Webアクセシビリティという言葉は最近ではもうかなり身近なものになってきているように感じます。最近では配慮の努力が義務化されホットな話題でもあるのでしょう。
しかしながら多くの人がWebアクセシビリティとは、何らかの障がいのある人や高齢者など、一部のユーザーに向けた配慮という認識が強かったのではないでしょうか。
Webアクセシビリティへの配慮は、非常に身近な一般的なユーザーにとっての使いやすさを追及することから始まる、という認識を持つだけで、取り組み方のイメージも湧いてくるのではないでしょうか。
身近なところから始めるという意識で、Webアクセシビリティに取り組む第一歩のきっかけとなれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この記事を書いた人
クーシーブログ編集部
1999年に設立したweb制作会社。「ラクスル」「SUUMO」「スタディサプリ」など様々なサービスの立ち上げを支援。10,000ページ以上の大規模サイトの制作・運用や、年間約600件以上のプロジェクトに従事。クーシーブログ編集部では、数々のプロジェクトを成功に導いたメンバーが、Web制作・Webサービスに関するノウハウやハウツーを発信中。
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テキスト:小原 太郎 デザイン:大坂間 琴美