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【アクセシビリティ法規制】世界各国の動向とあなたのサイトへの影響

【アクセシビリティ法規制】世界各国の動向とあなたのサイトへの影響

インターネットの普及が進み、あらゆる年代、性別、人種、職業の人がインターネットにアクセスできるようになりました。その中であらゆる人にとっての使いやすさ、つまり「アクセシビリティ」がグローバルに求められるようになっています。

世界各国ではそれぞれがWebアクセシビリティへの対応義務化を進め、明確な基準を設ける国も出てきています。日本においても努力義務が決定したということで、アクセシビリティ対応が進んではいるものの、世界に遅れをとっているのが現状です。

海外では訴訟の件数が急激に増加しており、これがグローバルスタンダードとなった場合、日本にも対応が求められることは想像に容易いでしょう。

そこで本記事では、今後必ず必要となってくるWebアクセシビリティへの対応の準備として、Webアクセシビリティに関する世界各国の法規制とその動向を探って行きます。

本記事を、Webアクセシビリティの動向をグローバルな視点で見ることから、今後のWebアクセシビリティへの対策にぜひ生かしてもらえればと思います!

Webアクセシビリティの基本

世界の動向を話す前に、まずはアクセシビリティの基本について確認しておこうと思います。

Webアクセシビリティとは、障がい者や高齢者を含めたあらゆる人にとっての、Webサイトやオンラインツールの利用しやすさ、を指します。

よくWebアクセシビリティについての説明で、「障がい者や高齢者の方々でも問題なくWebサイトを使えるようにすること」というのがありますが、これは狭義での説明と言えます。広義には「Webサイトが、障がい者や高齢者のみならず全ての人にとって、利用しやすい状態にあるかどうか」と言えるでしょう。

全ての人にとって利用しやすい状態にすることを「Webアクセシビリティに配慮する」と言いました。

また、Webアクセシビリティについては、国際的な基準が設けられており、最も広く認知されているのは、W3C(World Wide Web Consortium)によって開発されたWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)です。WCAGは、Webコンテンツがすべての人にとってよりアクセスしやすくなるように設計された一連のガイドラインであり、大きく「知覚可能」「操作可能」「理解可能」「堅牢」の4つの原則に基づいています。

Webアクセシビリティの基本についての解説は、こちらの記事で行っているので、ぜひこちらもお読みください!

Webアクセシビリティ入門:誰もが使いやすいWebサイトを作るための第一歩

世界の動向による日本企業への影響

そもそもなぜ世界の動向を知る必要があるのかについて。

冒頭で述べましたように、世界では既にWebアクセシビリティへの対応を義務化していたり、達成すべき基準を明確に設けていたりする国がいくつかあります。日本でも対応への努力義務が決定しましたが、努力していないことによる損害を具体的にイメージできるほど社会に浸透している雰囲気ではありませんよね。

既にアクセシビリティについての法整備が進んでいる国の例としてアメリカが挙げられます。訴訟大国であるアメリカでは、2017年までは100件前後だったとされるWebアクセシビリティへの未対応が原因の訴訟件数が、2021年には4,000件を超えたとも言われています。

アメリカ以外でも訴訟事例は増えており、有名な例として、シドニーオリンピック公式サイトの件が挙げられます。世界で初のWebアクセシビリティに関する訴訟事例と言われ、視覚障がい者への対応不足が問題とされました。またドミノピザや大物女性歌手ビヨンセの公式サイトなども訴訟の対象となっています。

このようにここ数年で訴訟件数は急激に増加しており、NetflixやAmazonなどの大手企業から近年では中小企業も対象とされています。

アメリカの他にもカナダや韓国、オーストラリアなど各国で法整備が進んでおり、日本は多少遅れをとる形です。海外展開している日本企業に対応の必要があるのはもちろんですが、国内の法整備が今後どのような動向を見せるのか、現段階では不透明な部分もありますが、努力義務が決定したことや、世界の流れを見るに、今後世界水準に合わせる形で法整備が行われていくことは確かでしょう。

対応の義務化に素早く対応するためにも、世界の動向を見ることで、現時点から対応の方針を知っておくことが重要になるのです。

その際、日本の規制と比較するのも良いと思います。下記の記事で日本のWebアクセシビリティについて解説しておりますので、こちらの記事もぜひご覧ください。

Webアクセシビリティとは?義務でなくても今から取り組むべき理由

では続いて、各国の具体的な法規制について見ていこうと思います。

アメリカ

アメリカは世界で最もWebアクセシビリティに関する法整備が進んでいる国の一つです。主な法規制として二つ紹介します。

障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act, ADA)

1990年に障がいを持つ人々が社会のあらゆる側面で差別されないよう保護することを目的として制定されたアメリカ合衆国の法律です。近年アメリカで増加している、アクセシビリティに関連した訴訟の根拠としてよく用いられるのがこの法律になります。

ADAは主に、「雇用」「公共サービス」「公共施設での取り扱い」「電話通信」の4つの柱からなり、3つ目の柱「公共施設での取り扱い」は、Webサイトにも適用されるだろうと解釈されています。物理的なアクセシビリティだけでなく、デジタル空間におけるアクセスの平等も保障することを目指しているようです。

この法律には、Webアクセシビリティに関する明確な基準が記されていないため、アクセシビリティの評価という目的では国際基準であるWCAGが用いられています(WCAGにおいてレベルAA以上が求められる)。

リハビリテーション法508条

こちらは、連邦政府機関のWebアクセシビリティ対応について規定した法律です。「連邦政府機関が調達(購入など)、利用する電子機器や情報技術については、障がいを持つ連邦政府職員や国民でも問題なく使えるものでなくてはならない」という内容です。Webサイトも規制の対象に含まれています。

ADAと同様、基準としてWCAGが採用されており、レベルAAの基準が求められます。

カナダ(オンタリオ州)

カナダ、オンタリオ州では州法によってWebアクセシビリティについて独自の規制を設けています。

障害者の機会均等アクセス法(Accessibility for Ontarians with Disabilities Act, AODA)

この法律は、障がいを持つオンタリオ州民でも教育や職場、公共空間といった社会のあらゆる分野において障壁を経験しないで済むようにすることを目指したものです。基準はアメリカのケースと同様に、WCAGに準拠するとされ、レベルAAが求められています。

この法律は、公的機関のみならず州内のあらゆる組織に対してガイドラインの遵守を求めており、州をあげてのアクセシビリティへの対応が行われています。

欧州連合(EU)

EUにおいてもアクセシビリティに関わる共通のガイドラインが用意されています。

EUのアクセシビリティ指令

こちらの法規制は、EUにおけるアクセシビリティ対応の指針を示したものであり、2025年以降にEU市場内で利用可能となる製品・サービスを対象に対応を促しています。

例えば放送や交通機関といったものから、個人向けのPC、スマートフォン、それから金融サービスや通信サービス。そしてもちろん動画配信サービスを含めたWebサービスも対象とされています。

こちらの指令では、規制の対象ごとに求められる対応の基準が異なり、具体例を添えて対象ごとのアクセシビリティ要件が示されています。しかし、それらすべての具体例に通底して適応される要件に「知覚可能で、操作可能で、理解可能で、かつ堅牢」という文言があり、これはまさしく、WCAGの要件と一致しているため、この指令もWCAGに準拠したものだと解釈して問題ないでしょう。

韓国

韓国では、事実上の国際基準であるWCAGを自国用にアレンジしたものを基準として設けているという特徴があります。

障害者差別禁止法

こちらは障がいを理由とした差別を禁止し、障がい者が社会の様々な分野で平等に扱われることを保証する法律で、教育や雇用、消費行動などあらゆる分野においてアクセシビリティが求められています。

この法律内でアクセシビリティの基準として韓国では、WCAGをもとにした「KWCAG」なるものを基準として設けています。自国独自の基準を設けることで(実際には国際基準に沿ったものになってはいるが)、国民の当事者意識を高める、という意味で非常に効果的な方法であると考えられます。

オーストラリアの障害差別禁止法

アクセシビリティ対応に熱心であるオーストラリアにも、当然法整備に基づいたアクセシビリティ対応の基準が設けられています。

障害者差別禁止法

こちらは障がいを持つ人々が教育、雇用、公共サービスなどのさまざまな分野で差別されないよう保護することを目的として定められた法律であり、デジタルサービスやWebサイトにおけるアクセシビリティもこちらの法律を根拠にして各サービスやWebサイトに求められています。

具体的な基準として、「Web Accessibility National Transition Strategy(Webアクセシビリティ移行策)」なるものが定められており、連邦政府・各州政府それぞれのCIOを戦略実施の責任者として2010年より進められました。

基準としてはWCAGのレベルAAを目標とし、こちらも国際基準に沿ったものとなっています。

まとめ

Webアクセシビリティの法規制に関する世界の動向を紹介しました。

ご覧いただいて感じていただけたかと思いますが、世界のWebアクセシビリティ対応はかなり進んでおり、アメリカでの訴訟件数を見れば一目瞭然でしょう。

日本においても同様の対応が求められるようになるのは、そう遠くないと思われます。世界の動向と、法規制の中での各企業の対策なども知ることで、そういった変化にも素早く対応できるよう準備しておくことが必要です。

皆さんにとってこの記事がそのきっかけとなれれれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

クーシーブログ編集部

この記事を書いた人

クーシーブログ編集部

1999年に設立したweb制作会社。「ラスクル」「SUUMO」「スタディサプリ」など様々なサービスの立ち上げを支援。10,000ページ以上の大規模サイトの制作・運用や、年間約600件以上のプロジェクトに従事。クーシーブログ編集部では、数々のプロジェクトを成功に導いたメンバーが、Web制作・Webサービスに関するノウハウやハウツーを発信中。

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