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ポートレート写真撮影に最適なレンズの焦点距離を考察する

ポートレート写真撮影に最適なレンズの焦点距離を考察する

人物写真はどんなWebサイトにも欠かせない定番の画像素材です。では、人物を被写体にしたとき、みなさんはどの焦点距離のレンズを選ぶでしょう。大胆なパースが付く広角レンズ、自然な描写の標準レンズ、ポートレートに向くと言われる中望遠レンズなど、選択肢はさまざま。焦点距離が変われば人物の捉え方はもちろん、背景とのバランス、向く用途などが変わってきます。今回は、人物写真における焦点距離の違いによる表現の差、個人的に多用する35mmと135mmの魅力などをお伝えしてきます。欠かせないジャンルだからこそ、意図に沿った人物写真を手中に収められればいいですよね!

人物写真に使うレンズは人によってチョイスが異なる

たとえば僕が「人物写真を印象的に撮ってほしい」という依頼を受けたとします。そのとき、まずふたつの選択肢で迷うはずです。ひとつは「印象的=自然な表情と動き」。もうひとつは「印象的=破綻のない美しいポートレート」。このふたつは組み合わせてももちろんいいのですが、そもそもレンズのチョイスが異なります。
前者は35mm、28mm、50mmなど、標準域から広角域の焦点距離です。後者は85mm~135mmの中望遠域の焦点距離です。なぜチョイスが異なるのかの具体的な回答は後回しにし、まずは焦点距離ごとの描写の差を見ていきたいと思います。

16m F2.8で撮影

16m F2.8で撮影した写真

超広角域の16mmで撮影しています。背景も広く構図内に収まっていますが、超広角ならではの歪みが出ています。人物も顔が画面中央から外れているため、少しパースペクティブの影響を受けています。

28mm F2.8で撮影

28mm F2.8で撮影した写真

一般的な広角の焦点距離です。広角らしく背景も広く写っていますが、人物はかなり自然な描写となりました。

35mm F2.8で撮影

35mm F2.8で撮影した写真

準広角域の35mmで撮影。距離感、周辺状況の映り込みなどもナチュラルです。人によっては35mmこそが標準レンズという人も存在しますが、それも納得の使いやすい画角です。また全カットF2.8で撮影をしていますが、35mmF2.8くらいになると、ボケもそこそこ豊かになってきます。

50mm F2.8で撮影

50mm F2.8で撮影した写真

一般的に「標準レンズ」と呼ばれる50mmで撮影。50mmは人が注視している視野に合致するといわれているため、Webサイトに使用をしても、多くの人が違和感なく見られる写真になります。ちなみに使用しているレンズはSIGMA 50mmF1.4 Art。やはりシャープさが違いますね。

70mm F2.8で撮影

70mm F2.8で撮影した写真

中望遠域で撮影をすると、背景の街路樹が少しだけ手前に引き寄せられ、「圧縮効果」が出現しはじめていることがわかります。ボケも豊かになり、人の眼で見ているものから写真ならではの表現へと移行していきます。ちなみにここで使用しているレンズはCanon EF 70-200mm F2.8L II USM。暖かみと丸みがあって素晴らしい描写ですね。脱線すみません。

135mm F2.8で撮影

135mm F2.8で撮影した写真

さらに圧縮効果が強まりました。中望遠域になると、主役の「歪み」はほぼなくなるのも強みです。マクロレンズに90mmや100mmが多いのも、商品や複写する被写体を正確に捉えることができるから。人物写真においても、焦点距離を長くすることで歪みを抑えることができます。

200mm F2.8で撮影

200mm F2.8で撮影した写真

望遠域に入ると圧縮効果はかなり強く、街路樹はすぐ後ろにあるかのように見えます。公園で遊び人々も画面外となり、いわゆる「背景処理」がおこなわれた1枚になりました。つまり、雑多な場所であっても、それなりに見栄えの良い写真にできるということです。

このように、レンズの焦点距離でここまで人物写真の雰囲気は変わります。このサンプルを撮影する際に使用したレンズは3本。超広角ズーム、標準レンズ、望遠ズームです。ズームレンズを交えても3本必要なわけですから、単焦点レンズ派だと大変なことになりますよね。撮影依頼を受ける立場の人であれば、ひと通りの焦点距離を網羅しておきたくなるのは仕方のないこと。本当に写真は設備投資が大変です。

「印象的な人物写真」になる焦点距離とは?

比較サンプルを見て、どの焦点距離が「印象的」に見えましたか? おそらく、70mm以上の中望遠域から雰囲気はガラッと変わっていると感じるのではないでしょうか。ボケの豊かさに起因する立体感と存在感、圧縮効果による独特の表現などがとても印象に残ります。これらはテクニックではなくレンズのスペックに依存する部分。つまり、レンズは高価であっても、クライアントに対しての威力は絶大(笑)。開放F値が明るい望遠レンズはぜひラインアップしておくようにしたいです。

ただし、これは「広い場所での撮影」という条件が付きます。少し狭い室内の場合、50mmでも窮屈に感じることがあり、どうにか目一杯引いて85mmがせいぜい、100mmや135mmはまったく使えない事態も起こります。僕の経験上、室内での取材カットなどの主力は50mm、表情を重点的に撮るときは85mmというすみ分けです。85mm単焦点レンズはポートレートの鉄板レンズとして多くのメーカーからリリースされていますが、たしかに常用できるギリギリの中望遠レンズで、人気があるのも納得です。

本来ならば参考になるよう、取材カットや企業案件的カットを掲載したいところですが、権利上の問題があるためプライベート写真から85mmの作例をチョイスしてみました。異論がある方もいると思いますが、僕は85mmを長らく主力にしていて、標準レンズの延長という感覚で使ってしまっています。慣れてくると、スナップも85mmでというのが心地良く、また豊かなボケ味でドラマチックになります。

85mmでのポートレート
85mmでのポートレート。
スッと被写体が浮かび上がる描写をします。
85mmでのスナップ
85mmでのスナップ。
記録写真的ではない雰囲気重視の風景写真になるため、
観光や地域振興系のWebサイトなどでも頼もしい戦力になります。

私的に推薦したい人物写真向け焦点距離と用途

ここからは、セオリーから離れて、僕が実際に現場を通じて愛用している焦点距離と、その焦点距離がどのようなシーンで使われるかを解説してきます。

私的推薦(1)35mm=周辺状況+人物の両立

撮影場所などの条件によって使いやすい機材は変わるものの、僕が最初にカメラにセットするレンズは35mmの単焦点レンズです。35mmは定番であるものの、苦手意識を持つ人も多い焦点距離で、たしかに24mmや28mmほど周辺状況は写せず、50mmほどのボケは得られません。人物を撮影する際は、踏み込んでグッと近づかなければ非常に散漫な写真になる恐れもあります。ある程度の距離感の詰めが必要になることから恋人同士の写真向きといわれることもあるくらいです。

僕が35mmを選ぶ理由は、取材場所などの周辺状況もある程度伝えることができながら、設定する絞り値や距離感によっては、十分に人物の立体感も得られると思っているからです。
たとえば、Webサイトに人物を掲載する場合、多くケースでは「オーナー紹介」「働いている人の紹介」「事業内容」などだと思います。きっと撮影場所は人物に縁のある場所をセレクトすることがほとんど。でも、あまりにも背景処理をしすぎたり、人物だけをフィーチャーしてしまうと、何も周辺情報が伝わらない写真になってしまいます。過度なパースペクティブがなく、同時に情報量が豊富になる35mmは貴重な存在なのです。

35mmで撮影した写真1

Webサイト用に、民泊を営むご夫婦を撮影させていただきました。人物を主役にしながら、民泊がどのような場所にあるかもわかります。この自然な背景との対比が35mmの魅力ではないでしょうか。人物+企業ロゴなどを入れる際にもとても使いやすい焦点距離です。

僕の仕事内容によるところが大きいですが、Webサイトの撮影では、人物+仕事内容をルポルタージュ的に撮影する機会、楽しげな表情を切り取るためのロケ撮影が多いです。このときは機材を身軽にして、狭い作業場で邪魔にならないよう迅速に撮影することが必要で、他のレンズよりも小ぶりで動作もキビキビとしている35mm単焦点レンズは大きな戦力になります。
ズームレンズは画角の自由度が高いですが、咄嗟の撮影ではわずかな取り回しの良さが活きてきます。僕はEF 35mmF2 IS USMという手ブレ補正付きの単焦点レンズを愛用。あえて開放F1.4にしなかったのも取り回しを考えてのことです。

35mmで撮影した写真2
手仕事を切り取る機会は確実に増えてきている印象です。
室内での作業などを窮屈にならず、
同時に印象的なボケなども加味することが可能。

私的推薦(2)135mm=シネマティック的イメージカット/プロフィール

定番の中望遠レンズは85mm。僕はカメラ3台に単焦点レンズを付けるのがスタイルのため、最近は特に3本のレンズの焦点距離を大きくばらけさせるようにしています。その結果、愛用するようになったのが135mmです。
135mmは「長すぎる」といわれることも多いですが、望遠レンズならではの圧縮効果、遠くから人物をそっと狙うような映画的な写真などを撮ることができます。ワーキングディスタンスは必要なので、広い場所で撮ることがわかっている場合に用意しています。

135mmで撮影した写真1

ここまで被写体が遠くでも、135mmのレンズは絞りを開放付近にすることで立体感を作ることができます。スマートフォンとは明らかに異次元の描写が得られるので、苦手意識を持たずに導入してみてください。
この作例も前ボケが美しいと思いませんか?手書き文字を載せるようなトップ画像やイメージカットなどにとても使いやすい雰囲気を作ってくれます。

135mmで撮影した写真2

バストアップ+絞り開放で撮影をすると、背景はとろけてしまい、場所の情報がない写真になってしまいます。しかし、プロフィール写真用であれば、背景処理がなされており、使いやすい1枚になるのです。被写界深度が浅い中望遠レンズは、絞りの開きすぎが諸刃の剣になるので注意しましょう。

私的推薦(3)超広角=アクティブな印象作り

超広角レンズは、奥行き感をなくすパースペクティブが特徴です。広角になればなるほど、画面の四隅が引っ張られる歪みも出現します。個性的な歪みを活かすことでアーティステックさを演出でき、ストリート系スポーツとの親和性も高い影響もあるので、どこかアクティブで若々しいイメージを作ることもできます。Webサイトの対象年齢・嗜好によっては、確信犯的に超広角を採り入れるのはおもしろいかもしれません。

14mmの超広角で撮影した写真

14mmの超広角で撮影しています。ネイルをグッと至近距離で見せつつ、古着店の内部も見せることができます。また、パースペクティブによってネイルがせり出してくるような錯覚を持ちます。

17mmの超広角で撮影した写真

17mmで撮影しています。広角ならではの歪みによって、足がグンと長くなりました。もっとローアングルから撮れば、より強調されるはず。人物紹介をローアングル+超広角で見せたり、シューズや洋服をユニークに見せたりなど、おもしろい使い方ができるでしょう。実際に、シューズブランドが広告に超広角の写真をうまく使っていて、とても印象に残った記憶があります。

Web制作担当として各焦点距離のクセを知る大切さ

撮影時のレンズ選びは、もちろん撮影者に委ねられると思います。しかし、ここで紹介したように、以下を知っておけば、オーダーする際に「背景は処理してバストアップが欲しい」「パースペクティブを使い手元を強調したい」など、撮影者にも伝わりやすい指示を出せるようになると思います。

  • 超広角はパースペクティブがおもしろい
  • 35mmは適度な周辺状況の盛り込みとボケ味が同居する
  • 50mmはナチュラルで鉄板である
  • 85mmは豊かなボケ味を得られつつ取材カットでも使える
  • 135mm以上は人物遠景写真でも立体感が作れる最終兵器

「印象的な人物写真」というだけの指示では、撮影者の好みによって何通りもの仕上がりが予想でき、撮影者にしてみても、曖昧な指示に迷いが生じてしまうはずです。

おわりに

Webサイトは特徴付け、人の心に届くことが大切だと思います。そのひとつの手段として、レンズの焦点距離・画角にこだわってみてはいかがでしょう。
僕は写真の雑誌を作っているため、ときに著名な写真家さんの機材を見る機会を得ます。とある写真家さんは、基本は50mmで、人物も店内の様子を伝えるカットもほぼ50mmで完結させていることを知りましたが、その一定の画角がひとつの空気感を形成し、とても素敵に見えるのです。いっそのこと、魚眼レンズだけで撮ってみたっていいんです。正解はないからこそ、大胆なレンズ使いをして、Webサイトに個性を生んでみましょう。


大口径レンズならではのボケ味が魅力的な写真と、ボケの活かし方

鈴木文彦

この記事を書いた人

鈴木文彦

2007年にフィルムカメラ専門誌「snap!」を創刊。以降、趣味の写真に関する仕事に従事する。刊行物に「中判カメラの教科書」「フィルムカメラの撮り方BOOK」(玄光社)など。現在は「FILM CAMERA LIFE」「レンズの時間」編集長。

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