ドローンのふかん撮影とスチール撮影の関係性。撮る「高さ」を考える

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鈴木文彦(すずき・ふみひこ)

近年、Webサイトに欠くことができない「動画」。1枚の画像で情報を伝えるスチールと異なり、情報量を多角的に盛り込むことができるのは動画の強みで、中でもドローンを使った空撮映像は、ハッと人の眼を惹き付けることができるため引き合いも多いです。その理由は「高さ」。人が普段は見ることができない静止画・動画を撮ることの必要性、ちょっとした意識変化を採り入れるだけで「高さ」を変えることができるという実例などを今回は紹介していきます。

カメラの高さ・角度を変えることの大切さ

カメラを立った状態でそのまま構えると、約170センチの位置から被写体を捉えることになります。立っている人物は正面から、座っている人物は斜め上から。いわゆる見たことがあるアングルが量産されていきます。僕自身、時間に追われたときは、案外構図にはこだわったつもりであっても、なんだか動きのない写真ばかりになってしまったなあと反省することも。それは自分自身が立った状態(つまり最も楽ちんな状態)で撮っている時間が多いからだと思っています。

ですから、あくまで被写体が最もしっくりとくるアングル・構図は目指すものの、それを探る段階から、目線の高さを変えることは意識し、「上下、上下」とうわごとのように言いながら撮影していることすらあるのです。写真に高さが加わると、いつも見ているものから、ちょっとだけ意図のある「伝えようとしている写真」に変化します。わずか数十センチの違いであっても、大きく印象は変わるので、もしも自分自身で撮影をする際には、アングルを凝るというのは手軽かつ有効です。

カメラを立った位置から水平に構えて撮影。落ち着いた印象の写真になります。これがダメということではなく、どっしりとした王道という感じでしょうか。
しゃがんだ位置から撮影したローアングルの写真です。動きが出ました。50mm標準レンズを使っているためさほどではないものの、同様の撮り方で広角レンズを使うと、パースが強調されて動きはもっと出たはずです。

風景であっても同様です。カメラを立ったまま構えた位置からだと、安定した写真は撮ることができると思いますが、ときには地面すれすれから撮るなど、大胆にカメラの高さを変えてあげると、印象的な風景写真になると思います。ただ、これもどちらが正解、どちらが上手い、ということではありません。

カメラを立った位置から水平に構えて撮影。
しゃがんだ位置から撮影。カメラを低い位置から構えることで、砂浜が前ボケのようにフレームインし、立体感・奥行きのある風景写真になりました。

カメラはその昔、「ファインダーを覗いて撮る」というのが当たり前でした。レンズから通った象がミラーとプリズムによってファインダーに導かれた、いわゆる一眼レフ方式+光学ファインダーです。ところがいまは、ミラーレス一眼が主流となり、レンズからの像は電子映像として背面液晶モニターなどに表示されます。そしてモニターはチルト式、バリアングル式であるのが普通で、機材の進化によってローアングルやハイアングルでの撮影が容易になったのです。機材の進化が写真を変える。ミラーレス一眼の主流化は、間違いなく写真の大きな転換期になったでしょう。

実は僕はいまだに一眼レフをメイン機にしています。それは単純に一眼レフに信頼を寄せている機種があり、僕の撮影案件には必要十分であるということが大きいのですが、ローアングルで撮るときなどは、腹ばいになって洋服を汚しながら撮る必要があったり…。さすがにミラーレス一眼にしようかと頭をよぎる瞬間です(笑)。一応、背面液晶モニターを使ったライブビュー撮影機能は付いていますが、AFが会うまでに無限の時間がかかったり、チルトもしないためたいしたアングルの自由さはありません。ミラーレス一眼をお使いの方は、せっかくなのでアングルにこだわった撮影を楽しんでみてはどうでしょう。

高低差が作れる場所は撮影ポイントとして貴重!

新幹線からの車窓や、高架を走る車からの車窓を眺めていると、「あ、すごく絵になる場所だな」という場所を巡り会いますよね(職業柄?)。事実、僕はその場所を後日目指したこともあるのですが、実際に出向いてみると、さほど絵にならないことばかり。そう、これは高いところからの目線で見ているからで、地面に降り立つと何の変哲もない場所であることも多いのです。それだけカメラの高さというのは武器になるということがわかると思います。

ですから、ロケをしているときに高低差を作れるシチュエーションに出会うと、必ず撮影するようにしています。長い階段、窪地、登れる踊り場、顔を出せる二階の窓など、とにかく高低差が作れる場所を見たらとりあえずは移動するのです。

神社の階段の上から撮影。高さを出すと、目線が主観から客観にも変わるため、ストーリーが感じられるような雰囲気を作りやすいかもしれません。

広告写真などを見ていると、高低差を使ったダイナミックな抜け感などを出した写真、どうやって俯瞰から撮っているのか謎の写真などがあることに気付きます。それは、クレーンなどを使用しているから。広告写真家=クレーン多用みたいなイメージを勝手に持っていますが、撮影の規模感も大きく見えますし、実際に写真の質は変わりますから、とても使い勝手のある撮影小道具なのでしょう。もちろん僕のような人はクレーンを用意することなどできません。だから、高低差が作れる場所には常にアンテナを張っているのです。

脚立があるだけでもスチール撮影は変わる

意外に便利なのが脚立です。記者会見場などで脚立を使ってクリアな視界から撮影するというような使い方もできれば、俯瞰から商品などを撮影する際に大活躍してくれたりします。ロケでも、クレーンほどの高さは出ないものの、アングルにスパイスを加える役割は十分に担ってくれます。荷台が大きな車移動ができないと厳しいですが、目を引く写真を撮るためには用意しておきたいところです。

僕は最近、急遽真上からリーフを撮ってほしいというお願いをされたことがあります。そのとき、偶然脚立が真横になぜかあったため、斜めからではなく俯瞰でリーフを撮ることができました。ちなみに、リーフの真上に立ちカメラを向けることもできますが、商品の歪みを抑える中望遠レンズ以上のレンズを使うには高さが足りません。ワーキングディスタンスの確保のために高さを使うという発想も必要で、脚立はシンプルながらも有用なアイテムなのです。

真上から俯瞰で撮ったリーフ。脚立の最上段に座って撮影をしています。

ドローンは人の目線を軽々と超える文明の利器

さて、ここからは動画の世界についても触れたいと思います。そう、ドローンです。とはいえ、僕はドローンを飛ばすことないというスチール専門の人間。しかし、多くのロケ現場でドローンを持った動画チームと行動を共にしており、昔はたまにだった動画チームとのロケ同行も、いまではいないほうが珍しいというくらいになっています。いかに動画&ドローンが必需品になっているかが窺えますよね。それは当たり前です。クレーンならば10メートル程度の高さですが、ドローンはいくらでも高く飛ばせますし、途中に崖があっても線路があっても平気。海上だって撮ることができるのです。

うろ覚えの部分が多いのでサクッと書きますが、アリなど地面を這う生物は、高さの概念がない可能性があるという話を聞きました。人間も次元の認知は体感しているものまでに限られ、無数の時間軸が存在する五次元などは机上でしかわかりません。「新たな視点」が加わるということは、認知できる世界や表現に新たな領域が生まれるということ。大げさではありますが、ドローンという新たなギアによって人が見ることができない世界が見えるようになり、未体験の斬新な映像が撮れるようになり、それが広告などさまざまな場所で活かされているのが今ではないでしょうか。

同じ場所で撮影されたスチールとドローンの映像をご紹介します。新緑の季節。水田は伸び盛りの活き活きとした稲が風に揺れています。そして水田の奥には、かつては島として浮かんでいた小高い丘が。僕はその丘を主役にしようと思い、135mmの望遠単焦点レンズを絞り開放気味の設定にし、稲を舐めるようにして丘に視線が向かうように撮ってみました。遠景でもあっても手前、主役、奥があるような写真が撮れたのではないでしょうか。

秋田県にかほ市の九十九島で撮影。元々は海で多くの島がありましたが、鳥海山の噴火によって陸地となったという独特の地形の場所です。

一方、ドローンは九十九島の風景を大空を飛ぶ鳥の視点から記録することができます。地上からは見るのとは全く異なる視点。撮影地の全容をしっかりと伝える際には大きな武器となります。電車が通る場所であれば電車待ちをしたり、陸地から海岸へとドローン飛ばしドラマチックな変化を盛り込んだりもできますし、動画に似合う音楽を入れることで、気分を高揚させるような演出を採り入れることも可能です。

九十九島がどのような地形なのか、どのような広さなのかが一目瞭然です。緑の水田に浮か昔は島だった小高い九十九島。後ろには風車のある山々も見え、とてもダイナミック。 (撮影:狩所 航)

ドローンは人が足を踏み入れられない場所を易々と越えていく点が大きな武器です。離着陸ができる開けた場所を見つけ、そこからiPhoneのモニターを見ながら操縦するという感じで、みなさん撮影をしています。一方の僕は、あそこから撮れば良い1枚になるはず、という場所に狙いを定めててくてくと歩いて行くわけです。例えば展望台に僕が行くまでの間にドローンはとっくに別の撮影ポイントへと飛んでいっています。

別府温泉全景。ここに僕が到達する頃には、ドローンは向かいの山に到着しているかもしれません。

唯一のドローンの難点はセンサーサイズくらいでしょうか。しかし、それもまた時間の問題のような気がします。ドローンの画質はスチールには敵わないというのが通説でしたが、DJIのミドルクラスの機種であれば、センサーサイズは4/3型2000万画素のCMOS、画角24mm相当のHasselbladカメラを搭載しています。つまり、プロも撮影で使っていたフォーサーズ、現在もオリンパスなどが使用しているマイクロフォーサーズと同一のセンサーサイズということです。ここまでセンサーサイズが大きくなれば、もう動画から静止画として切り出しても、用途によっては遜色ないはず。いよいよ、スチールは画角やボケ味を強みにすることになるでしょう。

ドローン撮影の依頼方法と費用

依頼方法

ドローンは知名度こそ高いですが、周囲に持っている人はおそらくいないはずで、いまだに専門性が高いジャンルです。2022年度には免許制の導入も決定しており、ますますドローンの専門性は加速していくことでしょう。
現在、Webでは簡単にドローン撮影の会社がヒットします。多くは費用なども公開されており、ツテがなければWebから探すのは手っ取り早いと思います。
もちろんフリーランスで活動している方もいます。TwitterやInstagramなどのSNSで検索するだけで見つかるはず。動画の完成形もSNS上で見られるはずなので、実績から好みのものを見つけ、アプローチするというのも失敗しないやり方ではないでしょうか。

費用の目安

費用は尺に依存するのが一般的。SNSやWeb用の場合、1本1分以内ということがほとんどで、1分以内であれば撮影費・編集費込みで5万円以上くらい(交通費など別途)くらいの相場観。

数分の長尺であったり、ロケ場所の移動が多いなどのときは、もちろん金額は上がっていきます。

機材と撮影条件

機材の主流はラインアップが豊富で機能性・信頼性も高く、ドローンの代名詞的存在であるDJI製。ドローンは価格帯はピンキリで、資格・免許も現状は不必要なので、依頼先の使用機材を聞いておくのは必要でしょう。
低価格の小型ドローンの場合、画質はもちろん、風速によっては飛行が難しい場合もあり、結果としてリスケをすることによる費用アップなども想定されます。
また撮影予定地にたとえば以下の事前確認が必要です。

  • 飛行場至近などの撮影禁止エリアではないか
  • 許可取りが必要な私有地が含まれていないか

動画・ドローンの時代にスチールが果たす役割

では、動画が全てスチールに取って替わるかというと、そういうことではありません。情報が少ないスチールのほうがSNSの場合は手軽に捉えられることがあり、少なくても10秒ほどは見続けなければならない動画よりも「いいね」が集めやすいことすらあります。一方で、観光系のWebサイトなどではドローンは最強の武器になるでしょうし、Webサイトのブランディングに直結するイメージムービーや、スチールでは伝えづらい実用をサポートする手順解説などは動画を使うべきシーンです。それぞれが活きる場面で活躍させていきたいものですよね。

このコラムの第一回のテーマにもしましたが、「ピークの高さ」で勝負できる楽しさがスチールの魅力であり、動画とは少し異なっている点であるのは間違いありません。今回触れたように、カメラのアングル・高さを意識することで、制約が多いスチールでも動きやストーリー性を含ませることはできますし、敢えて正面・アイレベルでの写真を並べることで、かっちりとした印象や、丁寧な仕事ぶりを伝えることなどもできると思います。Webサイト担当者ならば、「高さ」を意識した備品なども視野に入れてみてはどうでしょう。「脚立は必要ですか?」みたいなひと言を添えられるだけでも、仕上がりに良い影響を与えるかもしれません。

Webサイトの成功に必要なのはスチールか、ドローンか、動画か。きちんと適材適所を見極めた上でWebサイトを構成し、撮影も構成に準じてセッティングすると良い結果を生むはずです。

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