【入門】Next.jsとは? Reactとの違いや利点をWeb制作会社がわかりやすく解説

「ReactでWebサイトを作ってみたけど、表示が遅い気がする…」
「作ったサイトが、Google検索でなかなか上位に表示されない…」
「ルーティングの設定が、なんだか複雑で面倒だ…」
Reactでの開発経験がある方なら、一度はこんな悩みを抱えたことがあるかもしれません。
ReactはWebサイトの見た目を効率的に管理し、ユーザーにスムーズで快適な操作感を提供する非常に強力なツールですが、プロの現場で求められる「表示速度」や「SEO」といった課題を解決するには、いくつかの“弱点”がありました。
その“弱点”を克服するために生まれたのが、Next.jsです。
この記事では、Next.jsとは何か、Reactと何が違うのか、そしてNext.jsがもたらす具体的なメリットについて、大手企業をはじめ豊富な実績を持つクーシーが初心者の方にもわかりやすく解説します。
なぜ今、React開発者にNext.jsが選ばれるのか?
Next.jsが多くのReact開発者に選ばれる理由は、Reactが持つ「UI構築の自由度の高さ」という最大のメリットはそのままに、「本番レベル(プロの現場で、実際にお客様に公開できるレベル)」で求められるパフォーマンスを、驚くほど簡単に実現できるからです。
Next.jsとは? Reactを本番レベルに強化するフレームワーク
Next.jsは、Reactをベースに開発された、いわば「Reactの強化パーツ」のようなフレームワークです。Webサイトをより高速にし、SEOにも強い構造にすることを目的としています。 Reactが持つUI構築の素晴らしさはそのままに、本番運用で求められる様々な機能が、最初からパッケージとして提供されています。
通常のReactにはない強力な機能
Next.jsには、開発を楽にし、サイトの性能を高めるための、多くの強力な機能が標準で搭載されています。
1.ファイルベースルーティング(File-Based Routing) | pagesというフォルダの中にファイルを追加するだけで、自動的にページのURL(ルーティング)が設定されます。Reactで必要だった、ルーティング用の追加ライブラリの導入や、複雑な設定作業は不要です。 |
2.サーバーサイドレンダリング(SSR) | ユーザーがアクセスするたびに、Webサイトの裏側にあるサーバーが、常に最新の情報に反映したページをその都度、新しく組み立ててから届けます。ECサイトやニュースサイトのように、情報が頻繁に変わるWebサイトに最適です。 |
3.静的サイトジェネレーション(SSG) | Webサイトのページを、あらかじめ完成形(HTMLファイル)で、サーバーに用意しておく方式です。完成形をそのまま渡すだけなので、ブログ記事やサービス紹介ページのように、内容があまり変わらないサイトを圧倒的に高速で表示できます。 |
4.APIルート | 通常は別のサーバーを用意する必要がある、お問い合わせフォームの送信処理や、データベースとの連携といった「サーバー側の機能」を、Next.jsのプロジェクトの中だけで、簡単に作成することができます。 |
5.画像最適化(next/image) | Webサイトで使う画像を、最適なサイズに自動でリサイズしたり、表示速度が速い最新のフォーマット(WebP)に自動で変換したりします。開発者が何もしなくても、画像が原因でサイトが遅くなる、という問題を解決してくれます。 |
これらの機能により、開発をシンプルかつ整理された状態に保ちながら、ページの読み込みが速く、検索エンジンで上位表示されやすいWebサイトを効率的に構築できます。
【比較】ReactとNext.js:表示速度やSEOでは何が違う?
下記の表にReact開発者のよくある悩み(左)と 、その悩みを解決できるNext.jsの優れた点(右) をまとめました。
開発者の悩み(React) | Next.jsが優れた点 |
---|---|
JavaScriptの読み込みを待つ必要があるため、ページの表示が遅い | プリレンダリング(SSG/SSR):ビルド時またはリクエストごとに、ページがサーバー側で事前に生成され、レンダリング済みのHTMLがブラウザに送られます。これにより、初期表示が高速化し、ユーザーエクスペリエンス(UX)が向上します。 |
SEOに弱く、検索エンジンでサイトが上位に表示されにくい | SEOに適したレンダリング:Next.jsはSSRやSSGによって、コンテンツを含む完全なHTMLを検索エンジンのクローラーに提供します。これにより、クローラーが内容を認識しやすくなり、SEO評価の向上に繋がります。 |
ルーティングやレイアウトの設定が面倒 | ファイルベースのルーティング:pages/ ディレクトリにファイルを追加するだけで、URLが自動的にが設定されます。レイアウトも規約に沿って簡単に構築できます |
ページ単位でのキャッシュや更新が難しい | インクリメンタル静的再生成(ISR):サイト全体を再ビルドすることなく、特定のページだけを再生成・更新できます。コンテンツの更新頻度が高い大規模なサイトに特に有効です。 |
パフォーマンスの分析や最適化がしにくい | Next.jsには、バンドルサイズの分析、ページごとのパフォーマンス測定、画像最適化の状況確認など、パフォーマンスを可視化・最適化するためのツールが標準で組み込まれています。 |
次に、Next.jsの特徴と利点を解説します。
表示速度を左右する「レンダリング」の仕組み
Next.jsがなぜ高速なのか。その答えは「レンダリング(ページを描画する方法)」にあります。Reactがクライアントサイドレンダリング(CSR)のみをサポートするのに対し、Next.jsは次のような複数のレンダリング方法をサポートしているのです。
React(CSR:クライアントサイドレンダリング):まず空っぽのHTMLをユーザーに届け、その後、ユーザーのブラウザ(クライアント)の力を使って、JavaScriptでページを組み立てます。そのため、最初の表示に少し時間がかかります。
Next.js(SSR/SSG:サーバーサイドレンダリング/静的サイト生成):サーバー側で、あらかじめページを完全に組み立ててから、完成品をユーザーに届けます。そのため、ユーザーはすぐにページを見ることができます。
ページの初期読み込み
Webサイトの表示速度は、ユーザー体験を左右する非常に重要な要素です。ReactとNext.jsでは、このレンダリングの仕組みが、根本的に異なります。
・Reactが採用する「CSR」方式
CSR(クライアントサイドレンダリング)とは、ユーザーのブラウザ(クライアント)側でページを組み立てる方式です。まず、Webサイトは「空っぽのHTML」と「ページの設計図(JavaScriptファイル)」をブラウザに送ります。
ブラウザは、その設計図を読み解きながら、ユーザーの目の前で、一からページを組み立てて表示します。このため、設計図が大きかったり、ユーザーの通信速度が遅かったりすると、最初の表示までに時間がかかってしまう、という課題がありました。
・Next.jsが採用する「プリレンダリング」方式
Next.jsは、「プリレンダリング(事前な描画)」という方式を採用しています。これは、あらかじめサーバー側で、ページを完全に組み立てておく方式です。ブラウザは、その完成品のページ(HTML)を受け取り、そのまま表示するだけです。
そのため、ユーザーはアクセスしてすぐに、完成したページを見ることができます。これが、Next.jsの表示が圧倒的に速い理由です。
SEOへの適合性
React(CSR)では、検索エンジンのクローラーがサイトを訪れた際、中身が空っぽに見えてしまい、正しく評価されないことがありました。
一方、Next.jsは、最初から内容が全て書かれた完成品のHTMLを渡すため、クローラーは「このページには、こんなに価値のある情報が書かれているんだな」と、正確に理解してくれます。ですから、SEOに非常に有利と言えます。
ルーティング
ページのURLを設定し、ユーザーを目的のページへ正しく案内する「道案内」の仕組みが、ルーティングです。この仕組みの作り方も、ReactとNext.jsでは大きく異なります。
Reactの場合:「手書きの地図」を作る
Reactでは、「AというURLに来たら、Bというページを表示してください」という指示書(コード)を、開発者が1つ1つ手動で書く必要があります。これは、非常に柔軟な設定が可能ですが、ページの数が増えるほど、設定が複雑になり、手間もかかります。
Next.jsの場合:「フォルダ構造」が、そのまま地図になる
一方、Next.jsには「ファイルベースルーティング」という、画期的な仕組みが備わっています。これは、pagesという名前のフォルダの中に、ファイルやフォルダを置くだけで、その構造が自動的にWebサイトの地図(URL)になる、というものです。
例えば、
pages/about.js というファイルを作れば → https://example.com/about
pages/service/branding.js というファイルを作れば → https://example.com/service/branding
といった具合に、直感的にページを増やしていくことができます。
この仕組みにより、開発者はルーティング設定の手間から解放され、より本質的な開発に集中できるのです。
手動で整理するReactの場合

自動でファイル生成されるNext.jsの場合(ファイルベースルーティング)

静的サイト生成(SSG)
静的サイト生成(SSG)とは、Webサイトのページを、あらかじめ完成品の形(HTMLファイル)で、サーバーに用意しておく表示方式です。
ユーザーからアクセスがあるたびにページを組み立てるのではなく、すでに完成しているページをそのまま渡すだけなので、ページの表示速度は圧倒的に高速になります。
ブログ記事や、企業のサービス紹介ページ、製品のドキュメントといった、内容があまり頻繁に変わらないWebサイトには、このSSGという方式が最適です。
サーバーサイドレンダリング(SSR)
一方、サーバーサイドレンダリング(SSR)とは、常に情報が変わり続ける、動きのあるWebサイトに最適な表示方式です。
SSGが、あらかじめ完成品のページを用意しておく方式だったのに対し、SSRは、ユーザーからアクセスがあるたびに、Webサイトの裏側にあるサーバーが、常に最新の情報を反映させたページをその都度、新しく組み立ててから、ユーザーに届けます。
そのため、価格や在庫がリアルタイムで変動するECサイトや、刻一刻と情報が更新されるニュースサイトなどでも、ユーザーはいつでも正確な、最新の情報を手に入れることができるのです。
SSG(静的サイト生成) | SSR(サーバーサイドレンダリング) | |
---|---|---|
HTML生成のタイミング | ビルド時(デプロイ時に一度) | リクエスト時(アクセスごと) |
表示速度 | 非常に高速 | SSGに比べると遅い |
データの鮮度 | 古いデータになる可能性がある | 常に最新 |
主な用途 | ブログ、ドキュメント、静的な製品ページ | ECサイト、会員制サイトのダッシュボード |
サーバー負荷 | 低(リクエストごとにレンダリングする必要がない) | 高(サーバーが各リクエストをレンダリングします) |
ホスティング | CDN/静的ホスト(Netlify など)でホストできます | Node.jsサーバーまたはバックエンド環境が必要です |
Next.js最大の強みは「いいとこ取り」できる柔軟性
そして、Next.jsの最大の強みは、その柔軟性にあります。 1つのWebサイトの中で、ページの特性に合わせて、高速表示が得意なSSGと、常に最新の情報を表示できるSSRという、2つの異なる表示方式を自由に組み合わせることができるのです。
この「いいとこ取り」ができる柔軟性こそが、ユーザー体験とビジネスの成果、その両方を最大化させる、Next.jsが誇る力です。
パフォーマンスをさらに高める応用テクニック「ISR」とは?
ここまで、SSGとSSRという、2つの表示方式についてご説明しましたが、まだお伝えしていないことがあります。それは、SSGには「一度作ると、次にサイト全体を更新するまで情報が古いまま」という弱点が、SSRには「アクセスが集中すると、サーバーの負荷が高まる」という弱点が、それぞれあること。
この、SSGの「鮮度」の問題と、SSRの「サーバー負荷」の問題。 その両方を、“いいとこ取り”で解決する第三の選択肢が、ISR(インクリメンタル静的再生成)です。
ISRとは、指定した時間ごとに、ページを自動更新する仕組み
ISRは、基本的にはSSGと同じく、あらかじめ完成品のページを用意しておきます(だから高速)。 しかし、ISRが賢いのは、「一定時間ごとに、自動で、そして裏側で、こっそりと」新しいページを作り直してくれる点です。
例えば、「1時間ごと」と設定しておけば、
- ユーザーは、常に最大でも1時間前の、比較的新しい情報が載った、高速表示のページを見ることができます。
- サイトの更新は、裏側で自動的に行われるため、アクセスが集中しても、サーバーにほとんど負荷がかかりません。
このISRという“切り札”があることで、Next.jsは、ニュースサイトやECサイトといった、情報の「鮮度」と「表示速度」の両方が求められる、非常に要求の高いWebサイトにも、完璧に対応することができるのです。
Next.jsの実際の活用例
Next.jsは、その柔軟性と高いパフォーマンスから、NetflixやUberといった世界中の様々なジャンルのWebサイトで採用されています。ここでは、その代表的な活用例をいくつかご紹介します。
技術ブログ
日々大量に公開される記事ページを、SSG(静的サイト生成)やISR(インクリメンタル静的再生成)で高速に配信。多くのユーザーが快適にコンテンツを閲覧できる環境を提供しています。
ECサイト
常に価格や在庫が変動する膨大な数の商品ページを、SSR(サーバーサイドレンダリング)で常に最新の状態に保ちつつ、高速な表示を実現するために活用されています。
業務用の管理画面
ユーザーごとに表示内容が異なる、複雑なダッシュボードや管理画面において、Reactが持つインタラクティブなUI構築能力を最大限に活かし、快適な操作性を実現するために使われています。
まとめ:Next.jsはReact開発者の強力な武器になる
Next.jsは、Reactの素晴らしい表現力はそのままに、「表示速度」「SEO」「開発のしやすさ」といった、本番環境で避けては通れない課題を見事に解決してくれます。特に、コンテンツの特性に応じてSSGとSSRをページ単位で使い分けられる柔軟性は、Next.jsの非常に強力な機能です。
- Reactの経験を、さらに次のレベルへ引き上げたい
- ユーザー体験と、ビジネス成果(SEO)の両方を妥協したくない
- よりモダンで、効率的な開発手法を身につけたい
Next.jsの学習は、これらを解決し、みなさんの市場価値を飛躍的に高める、最高の自己投資となるでしょう。
さあ、Next.jsを始めましょう
Next.jsを始めるのは、とても簡単です。
すでにReactの開発環境がある方ならよりわかりやすいと思いますが、以下のコマンドを実行するだけで、ホットリロードやファイルベースルーティングが組み込まれた、新しいプロジェクトがすぐに立ち上がります。
npx create-next-app@latest my-next-app cd my-next-app npm run dev |
Next.jsを学ぶことで、の学習は非常に価値のある選択です。既存のReactスキルを活かしながら、本番環境で通用するアプリケーションをより効率的に構築するための強力なツールセットが手に入るのですります。
さらに、パフォーマンスを追求する上で、「Astro.js」のようなNext.js以外の新しい選択肢も次々と登場しています。Webサイト制作の選択肢はNext.jsだけではありません。同じくパフォーマンスの高さで注目されるフレームワーク
クーシーでは「Astro.js」についてもは、下記記事で解説しています。ぜひ併せてお読みください。

Astro.jsとは? 高速・軽量の新世代フレームワークをWeb制作会社が詳しく解説
私たちは、Next.jsのような最新技術と、25年の実績で培ったデザイン・情報設計、そしてシステム開発の知見を組み合わせ、ワンストップでお客様のビジネス成功につながるWeb戦略をサポートいたします。下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人
クーシーブログ編集部
1999年に設立したweb制作会社。「ラクスル」「SUUMO」「スタディサプリ」など様々なサービスの立ち上げを支援。10,000ページ以上の大規模サイトの制作・運用や、年間約600件以上のプロジェクトに従事。クーシーブログ編集部では、数々のプロジェクトを成功に導いたメンバーが、Web制作・Webサービスに関するノウハウやハウツーを発信中。
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