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Webブランディング入門ガイド:記憶と好みに働きかける前準備とは?

Webブランディング入門ガイド:記憶と好みに働きかける前準備とは?

Webブランディングは、ユーザーから選ばれる存在となるために、独自性と一貫性のあるコンセプトを実行する施策です。その重要性を知りつつも、具体的な実践方法に悩む企業は少なくありません。

ズバリ本記事は、Web制作会社のクーシーが、Webブランディング戦略の策定から実行までを具体的にイメージするための入門ガイドとして作成しました。

具体的には、ブランディング施策に欠かせないマーケティング手法の「STP分析」を念頭にした概説を画像つきでわかりやすく解説します(発展編となるSTP分析の詳細は別記事)。このガイドを読み進めることで、Webブランディング施策で取るべき方向性を定めやすくなるはずです。

では、最初にWebブランディングの基本を簡単に紹介しましょう。

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Webブランディングとは?

Webブランディングとは、Webサイトを中心としたあらゆるオンライン活動を通じて、企業や商品の「ブランド」を構築し、その価値を高めていく戦略的な取り組みです。

Webブランディングが目指すのは、ユーザーとのあらゆるオンライン上の接点において、企業やサービスが持つ独自の価値を一貫して届け、信頼共感を育み、ユーザーにとって特別な存在として認識されることにあります。

以上がWebブランディングの基本的な考え方です。ですが、これだけですと「それらしき」ことを言っているだけに聞こえるかもしれません。そこで、次にWebブランディングがもたらす効果とそれがビジネスで必要とされる動機をまとめ、一歩踏み込んだ解説をしていきましょう。

Webブランディングを進める基本的な考え方

Webブランディング戦略の目的をハッキリさせるためにも、まずは一般的なブランディングの効果やこの施策が求められる動機を整理します。

2つの効果、メリット:第一想起と指名買い

Webブランディングが成功すると、企業は主に2つの強力な効果を期待できます。

  1. 第一想起の獲得

    特定のニーズやカテゴリーにおいて、ユーザーの頭の中に真っ先に思い浮かぶブランドとなることです。例えば、「おしゃれなカフェで作業したい」と思った時に、みなさんのブランドが自然と候補に挙がる状態を目指します(この例で言えばスターバックスが思い浮かぶのではないでしょうか)。

  2. 指名買いの促進

    第一想起を獲得し、さらにブランドへの信頼と愛着が深まると、顧客は他と比較検討することなく、積極的にみなさんのブランドを選んでくれるようになります。これが「指名買い」です。価格競争から脱却し、安定的な収益を確保するためには、この指名買いをいかに増やせるかが鍵となります。

情緒に働きかけ、記憶に残し、好んでもらう

ところで、ブランドの語源を遡ると「焼き印をつける」という意味があります。ブランディングとはまさにターゲットユーザーの「記憶」への定着や「選好」に働きかける施策です。ですから、ブランディングは、おしゃれなデザインで着飾ることではありません。

そうではなく、特定のターゲットに響く印象を与え、その印象からブランドを連想しやすくなる統一感を整え、記憶に定着しやすくし、結果、ユーザーの「好み」に影響を与えること。それがブランディング施策です。

4つの動機:差別化、役割、採用、社内活性化

では、企業がこれらの効果を目指し、Webブランディングに取り組む背景にはどのような動機があるのでしょうか。代表的なものとして、以下の4つが挙げられます。

  1. 競合との効果的な差別化を図りたい
  2. 市場における自社の役割・ポジショニングを明確にしたい/変えたい
  3. 採用におけるミスマッチを減らし、質の高い人材を獲得したい
  4. 社内外へのブランド浸透を通じて組織を活性化させたい

これら課題を解決するため、どのようなステップを踏むべきなのでしょうか。

イメージでつかむブランディング手順

ブランディングに取り組む基本的な流れは以下の通りです。

  1. 自社の現状を分析する
  2. ユーザーが持つイメージを調べる
  3. 競合と比較する
  4. 自社の取るポジションを決める
  5. ブランドアイデンティティーを決めて実践する

詳細な分析方法は後ほど解説します。ここではブランディングを進めるイメージを想像できるよう、画像も使いながら紹介します。順に見ていきましょう。

1. 自社の現状を分析する

現状分析は自社の「現在地」を知る作業です。扱っている商品、売れているもの・売れていないもの、経営理念、市場での強み・弱みなどのポイントを洗い出しましょう。

2. ユーザーが持つイメージを調べる

企業が打ち出すイメージと消費者が持つイメージはズレているかもしれません。そこでユーザーにとって自社はどんなイメージなのか調べます。

3. 競合と比較する

自社と競合他社の違いを明らかにします。商品・サービスの価値、デザイン、価格など、比較した上で自社と他社の強み・弱みを抽出します。このとき比較する軸を2つ決めると自社と他社の立ち位置がわかりやすくなります。

4. 自社の取るポジションを決める

自社と他社の現在位置がわかったところで、これから取るべきポジションを設定します。ユーザーにどんなイメージを持ってほしいかを念頭に置き、マップ上でどこにポジションを取るのかを決めましょう。

以上がブランディング戦略を練り上げる大まかな流れです。ポジションを定めたら(この詳細なマーケティング手法がSTP分析)、Webサイトに盛り込むブランドデザインやコンテンツに活かしましょう。

STP分析のやり方を3ステップで解説【事例付きWebブランディング実践ガイド】

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5. ブランドアイデンティティーを定める

自社が取るポジションが明確になったら、いよいよその戦略を具体的な行動へと落とし込むための「核」を定義します。それがブランドアイデンティティ(BI:Brand Identity)の構築です。

BIとは、「ターゲットユーザーからこう思われたい」というブランドの理想像です。そのブランドだけの個性や大切にしている価値観、そして「こんな風に役に立ちます/楽しませます」というユーザーへの約束を、誰が見ても・聞いてもわかるように、具体的な言葉やデザインでハッキリと示したものがBIです。

これは、単なるスローガンやロゴデザインに留まりません。Webサイトのデザインや文章のトーン、ユーザーへの対応、さらには社内の行動指針に至るまで、あらゆる企業活動の「羅針盤」となるべきものです。

その最も有名な成功例の一つが、Appleの「Think Different」です。「常識にとらわれず世界を変える」というこのBIは、iPhoneに代表される革新的な製品(これはテクノロジーを多くの人に解放するものでした)や、ミニマルなデザイン、直感的なインターフェース、洗練された店舗体験など、あらゆる企業活動に一貫して反映され、Appleというブランドを力強く形作っています。

このように、BIは、企業にとって計り知れない価値を持つ経営資産となります。このBIを明確に定義し、それをWebサイトのデザインやコンテンツ戦略へと落とし込んでいくことが、Webブランディングを成功させる重要なステップなのです。

【基礎解説】企業価値を高めるコーポレートアイデンティティとは?

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【成功事例】主要ブランドから学ぶWebブランディング戦略

ここまではブランディングの基本的な手順を見てきましたが、実際に成功している企業はどのようにWebブランディングを実践しているのでしょうか? ここでは、誰もが知る一流ブランドの事例から、その戦略のヒントを探ってみましょう。

Apple:デザインによるシンプルさ、革新性、憧れ

AppleのWebサイト|Webブランディング事例①

さて、今一度、AppleならではのWebブランディング戦略を覗いてみましょう。AppleのBIは、「Think Different」に象徴される革新性、卓越したデザイン、そして人々の創造性を刺激する力です 。この哲学は、同社のWebサイトにも色濃く反映されています。AppleのWebサイトは、製品そのものが持つミニマリストで洗練されたデザインを忠実に再現し、まるで高品質なショーウィンドウのように製品の魅力を最大限に引き出しています 。

製品のスペックを詳細に語るのではなく、それを使うことでユーザーの生活がどう豊かになるのか、どんな新しい体験ができるのかを、美しいビジュアルとユーザー視点の簡潔なコピーで訴えかけます 。この「ショーウィンドウとしての高品質さ」と「ユーザーに寄り添うコピーライティング」の絶妙なバランスが、Appleならではの洗練された世界観を構築し、多くのユーザーに憧れや期待感を抱かせています。

ここから学べるポイント:

  • 高品質さをアピールするため、ブランドの世界観を体験できる「ショーウィンドウ」としてのWebデザインの設計の巧みさ。
  • 製品やサービスの機能的価値と、それがもたらす感情的価値や体験をユーザー視点の言葉で伝える。
  • 高品質なビジュアルと洗練されたデザインで、ブランドへの憧れや信頼感を醸成する。

無印良品:削ぎ落とした高品質さと身近さの両立

無印良品のWebサイト|Webブランディング事例②

無印良品は、「しるしの無い良い品」をコアコンセプトに、華美な装飾を排し、素材の良さと機能性を追求したシンプルで質の高い商品を適正価格で提供することを目指しています。この「これでいい」という合理的満足感をユーザーに与える哲学は、Webサイトのデザインやコンテンツにも一貫して貫かれています。白を基調としたミニマルなデザイン、整理された情報レイアウト、そして商品の本質を捉えた高品質な写真は、まさに無印良品の世界観そのものです。

Webサイトでは、単に商品を販売するだけでなく、「読みもの」といったコンテンツを通じて、商品開発の背景にあるストーリーや、無印良品が提案するライフスタイルを丁寧に伝え、ユーザーとの共感を育んでいます 。これにより、削ぎ落とされた高品質さと、日々の暮らしに寄り添う身近さという、独自のブランドイメージを確立しています。

ここから学べるポイント:

  • ブランドのコアコンセプトを、Webサイトのデザイン、UX、コンテンツの細部に至るまで一貫して反映させる。
  • 商品の背景にあるストーリーやブランドが提案する価値観をコンテンツとして発信し、ユーザーとの共感を深める。
  • シンプルさの中に、品質へのこだわりとユーザーへの配慮を込めることで、信頼感と親近感を両立させる。

星野リゾート:オンラインで非日常への情緒を掻き立てる

星野リゾートのWebサイト|Webブランディング事例③

星野リゾートのブランドアイデンティティは、「圧倒的な非日常体験」の提供です 。各施設を旅の目的地そのものとして位置づけ、それぞれの土地の魅力や独自のコンセプトに基づいた体験を提供しています 。

この「非日常への誘い」は、Webサイト上で巧みに演出されています。息をのむような美しい風景や旅先で人々がくつろぐ一瞬を切り取った写真をふんだんに使い、各施設が提供するユニークな体験が視覚的に訴求されています。また、各サブブランドが明確で、旅行者の好みや感情的なニーズに共鳴する体験(例:「星のや」での静寂、「界」での地域文化への没入、「OMO」での都市探索)を見つけることができます 。

施設情報を紹介するだけではなく、その土地の文化や自然、そこでしか味わえない体験をストーリーとして語りかけることで、ユーザーの旅への期待感や憧れといった情緒を掻き立てます。星野リゾートのWebサイトに訪れたユーザーは、自らが求める旅に自然に誘われ、まるでその場にいるかのような感覚を体験し、日常を忘れる特別な時間への想像を膨らませるのです。

ここから学べるポイント:

  • 体験型サービスの場合、Webサイトを通じてその体験の魅力や世界観を五感に訴えかけるように表現する。
  • 高品質なビジュアル(写真や動画)とストーリーテリングを効果的に組み合わせ、ユーザーの感情に響くコンテンツを提供する。
  • 提供する体験の独自性や価値を明確に伝え、ユーザーの期待感を高め、記憶に残るブランドイメージを構築する。

戦略的Webブランディングで築く良好な関係性

本記事では、Webブランディングの基本的な考え方から具体的な進め方、そして先進企業の事例を通じて、そのエッセンスを解説してきました。

Webブランディングで最も意識すべきなのは、ユーザーのニーズ(求めている価値)と、企業が提供できるシーズ(独自の強みや価値)を最適にマッチングさせることです。その上で、「◯◯といえばこの企業・この商品」と自然に想起してもらえるような、魅力的で揺るぎない独自性を確立すること。これらユーザーニーズと企業シーズのマッチングと独自性の確立こそが、ブランディングの真髄と言えるでしょう。

そして、このブランディング戦略を展開する上で、Webサイトは非常に強力なツールとなります。なぜなら、Webサイトならではの特徴は、ターゲットユーザーの属性や行動履歴に合わせて細やかに情報をチューニングし、洗練されたデザインと戦略的なコンテンツを組み合わせることで、最適化されたユーザー体験を提供できる点にあるからです。

そこで私たちクーシーが重視して取り組んできたのがWebならではの戦略企画です。創業から25年以上にわたり、多業種・多目的な企業や公的機関のWeb制作・運用に携わってまいりました。私たちがブランディング施策で目指すのは、企業とユーザー双方にとって価値あるコミュニケーションを生み出し、「架け橋」となることです。クーシーがこれまで手掛けてきたWeb制作・運用の具体的な実績については、ぜひ当社の「制作実績ページ」からご覧ください。Webブランディングに関するお悩みやご相談は、無料で承っております。まずはお気軽に、下記のリンク先のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

クーシーブログ編集部

この記事を書いた人

クーシーブログ編集部

1999年に設立したweb制作会社。「ラクスル」「SUUMO」「スタディサプリ」など様々なサービスの立ち上げを支援。10,000ページ以上の大規模サイトの制作・運用や、年間約600件以上のプロジェクトに従事。クーシーブログ編集部では、数々のプロジェクトを成功に導いたメンバーが、Web制作・Webサービスに関するノウハウやハウツーを発信中。

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