Web3.0とは?特徴やブロックチェーンの仕組みを解説
「Web3.0」という言葉を聞いたことがありますか?
では、具体的にどこで使われており、なぜ話題になるのかはご存知でしょうか。
Web3.0とは、ブロックチェーン技術を活用した次世代のWebの進化を指す概念です。
もしWeb3.0の活用範囲が広がれば、ネットだけでなく私たちの日常生活にも大きな変革をもたらすことが予想されます。
この記事では、Web3.0について生まれた背景から活用される未来までわかりやすく解説します。Web3.0とは何かを3分でざっと知りたい方はぜひ最後までお読みください。
Web3.0とは?
Web3.0とは、ブロックチェーンを基盤とした分散型のインターネットの概念です。現在はGoogle、Amazonなどの巨大企業、いわゆる「GAFAM」を経由して提供されるサービスが多いですが、大企業に情報が集中することにより、漏洩やプライバシー保護のリスクが生じています。
Web3.0ではこれまでのような中央集権的なプラットフォームに依存せずに、ユーザーが自分のデータを所有し、管理できるようになります。直接取引や送金なども可能です。
Web3.0は、データのセキュリティや透明性を高め、民主的なウェブを実現するための技術として期待されています。
Web1.0とWeb2.0との違い
Web3.0を理解する上で、Webの歴史を知ることは不可欠です。黎明期から見ていきましょう。
1991〜2004年頃までの期間を指すWeb 1.0は、静的なウェブページで構成されるウェブサイトが主流であり、ユーザーは情報を受け取るだけでした。2004年頃から現在までの期間を指すWeb 2.0は、プラットフォームとしてのウェブという構想に基づき、ユーザーがコンテンツを作り上げるウェブサービスが普及しました。
しかしWeb 2.0では、データやコンテンツが大手IT企業に集中し、ユーザーのプライバシーやセキュリティが脅かされるという問題が生じています。
これらの問題を解決するとともに、新たな可能性を提供すると期待されているのがWeb3.0です。Web3.0は、2014年にイーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッドによって提唱されましたが、注目を集めるようになったのは2021年になってからです。
Web3.0で変わること
Web3.0では、個人情報の保護や利用の民主化、ネットワークによる信頼性の担保が可能になり、Webが現実の国家やOSの制限から開放されると言われています。トークンという形で金融資産を組み込むことで、新たな経済活動やインセンティブの創出も可能です。
しかしWeb3.0はまだ発展途上であり、以下のような点が懸念されています。
- 不適切なコンテンツや振る舞いの制限が困難になる
- 有害なコンテンツの拡散
- 少数の投資家や個人への富の集中
- より広範なデータ収集によるプライバシーの侵害
Web3.0は単なるバズワードやマーケティング用語でしかないという意見もありますが、Webの未来を描く一つのビジョンであることは間違いありません。
Web3.0の特徴
上記のような変遷により生まれたWeb3.0ですが、特徴を簡単にいうと以下の3つにまとめられます。
- 個人がデータの所有者になる
- セキュリティの向上
- ネット上で参加や表現する自由の確保
個人がデータの所有者になる
Web 3.0において大きな変化の一つは、ユーザーが個人的にデータを所有することができるようになる点です。
先に述べたように、Web 2.0では実際にデータを所有しているのは主にプラットフォーム企業です。もしプラットフォーム上でデータが削除されると、購入したデータであっても利用できなくなります。
たとえば、Amazonなどからダウンロードした本などのデジタルコンテンツが典型的な例です。Amazonがこれらを削除したら、ユーザーは購入したデータを失ってしまいます。
Web 3.0では複数のコンピューターが分散管理を行うため、ユーザーがデータを所有できるようになります。その結果、データの改ざんや消失のリスクを低減できるのです。
セキュリティの向上
従来、個人情報などのデータはプラットフォーム企業によって管理されていました。
Web3.0に移行すると、データを特定の企業のサーバーに預けずに済むため、個人情報を狙ったサイバー攻撃やハッキングからの被害を回避できます。
さらにWeb3.0では、取引情報がすべてブロックチェーンに暗号化されて記録され、複数のユーザー間で共有されます。この「暗号化」と「分散化」によって、情報を安心して管理できるようになるのです。
ネット上で参加や表現する自由の確保
Web 3.0の時代では、誰もが自由にインターネットに参加し、自分の意見やアイデアを自由に表現できます。ここでは、特定の企業やプラットフォームの承認が必要なく、ソーシャルメディアでコンテンツを制限されたり、情報が検閲されたりすることはありません。
個人間でデータを直接やり取りできるため、このような自由な参加と表現が可能になっています。
Web3.0が活用されているサービス
Web3.0はすでに到来しており、ブロックチェーン技術を活用した新たなサービスが生み出され利用されています。以下に例をあげますが、どれも主にネット上で利用するサービスであるのが特徴です。
仮想通貨:安く早く海外送金が可能に
Web3.0では仮想通貨が注目されています。ブロックチェーン技術を基盤とした暗号通貨は、中央銀行や金融機関に依存せず、分散化された取引を可能にします。例えば海外送金の場合、従来は金融機関を経由していたため時間も手数料もかかっていました。仮想通貨なら個人間で直接送金ができるため、はるかに安く、早く送金できます。
NFT:デジタルコンテンツが “唯一” のものなる
NFT(Non-Fungible Token)は、Web3.0でとくに注目を集めている分野です。NFTはブロックチェーン上で一意性を持つデジタルアセットであり、美術品や音楽、ゲームなどの領域でデジタルコンテンツの所有権や価値を確立することができます。
従来のデジタルデータは容易に複製可能で、資産的な価値は認められませんでした。NFTには代替不可能という性質があり、デジタルデータであっても唯一のものとして価値が認められ、アートやゲームアイテムなどが取引の対象となっています。
DAO:組織から “中央” がなくなる
DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、分散化された組織の形態です。「分散型自立組織」と訳されます。Web3.0の技術を用いて、従来の中央集権的な組織の枠組みを超えて、参加者全体で意思決定や運営を行うことが可能です。
DAOはブロックチェーン上で運営されており、どのようなルールで運営されているか、ソースコードとして誰でも見ることができます。透明性と信頼性を重視し、分権化されたガバナンスを実現する仕組みなのです。
DeFi:金融機関を介さずに金融取引
DeFi(Decentralized Finance)は、分散型金融の概念です。Web3.0の技術を活用して、中央集権的な金融機関を介さずに、貸出・借入・ステーキングなどの金融取引を実施できます。国籍や居住地域に関係なく、ネット環境さえあれば基本的に誰でも利用可能で、より包括的でオープンな金融サービスが実現される可能性があります。
メタバース:自由に交流できる3次元仮想空間
メタバースは、仮想世界を形成する概念です。Web3.0とは別物ですが、両者を組み合わせることで大きく発展するのではないかと注目されています。
メタバースの特徴は、「空間」であることです。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術を活用し、ユーザーが自由に参加・交流できる3次元の仮想空間を構築します。Web3.0と組み合わせると、メタバース上のデジタルアセットの所有・取引にNFTが活用できたり、DAO参加者のコミュニティ形成の場としてメタバースが使われたりします。Web3.0が活用できる新たな空間として注目されているのがメタバースなのです。
Web3.0活用が期待されている分野
現在はネット上での利用が主であるWeb3.0ですが、オフラインにも活用範囲が広がっていく可能性があります。試みはすでに始まっていますので、例をご紹介します。Web3.0が私たちの暮らしとどう結びつき、世界を変えるのか。その一端が垣間見られるはずです。
環境:エネルギー取引を効率化
Web3.0の技術は環境問題の解決にも活用されています。ブロックチェーンの透明性や分散性を利用して、エネルギー取引の効率化や廃棄物管理のトレーサビリティなど、環境保護に関連するさまざまな取り組みが行われています。
例えば「電力の産地証明」は、自分が購入している再生可能エネルギーの産地証明にブロックチェーンを使うというものです。国際的にも、産地を証明した電力でないと本物の再生エネルギーだと認められないルールになっており、企業側からブロックチェーン技術を用いた立証ニーズが高まっています。
物流:産地偽装などの不正防止
分散型台帳技術を活用することで、物流業界におけるトラッキング、供給チェーン管理が可能になり、産地偽装や盗難などの不正防止の課題に対処できます。また、スマートコントラクトを使用して契約や支払いを自動化し、効率的な物流システムを構築することが期待されています。
スポーツ:引退後の年金に暗号資産
Web3.0の技術はスポーツ分野でも活用が期待されています。スポーツの試合結果やパフォーマンスデータをブロックチェーン上で公正かつ透明に管理することで、詐欺や不正行為の排除、トレーニングや選手マネジメントの効率化が可能になります。
他にも選手との契約や、引退後の年金のようなものに暗号資産が使えるのではという構想もあり、新たなスポーツチーム運営やリーグ活性化の鍵になるのではないかと言われています。
教育:ブロックチェーンで学習履歴や認定証明書を管理
分散化された学習プラットフォームやデジタルコンテンツの共有によって、教育の領域でもWeb3.0の活用が進んでいます。学習履歴や認定証明書の管理をブロックチェーン上で行うことで、信頼性の高い学習環境を提供し、個別の学習パスやカリキュラムの選択肢を広げることが可能です。
行政:「Web3.0(ウェブ・スリー)政策推進室」を設置
分散型のガバナンスやデジタルアイデンティティの導入によって、行政サービスの効率化や透明性の向上が期待されています。住民票や公的な証明書のデータ管理をブロックチェーン上で行うことで、信頼性の高い行政サービスを提供できるということです。
経済産業省では、2022年、大臣官房に「Web3.0(ウェブ・スリー)政策推進室」を設置しました。同省のニュースリリースによると、時代の潮流の変化に対応し、日本国内の事業環境整備について検討スピードを上げる必要があるとの判断があったようです。
健康:患者自身が過去の医療情報を開示できる
ブロックチェーンのセキュリティやデータの透明性を活用することで、健康データの共有や医療情報の管理が可能になります。例えば、他の医療機関で診療を受ける場合、患者自身が過去の医療記録を開示できれば、スムーズに情報を提供して治療を受けることができるでしょう。
その他にも医療者の資格や実績をオープンにして、受診する医療機関を患者にも選びやすくしたり、臨床試験データの信頼性を担保したりすることにブロックチェーン技術が役に立つと考えられています。
Web3.0の今後の課題
最後に、Web3.0が抱える課題について解説します。課題は以下の4つです。
- 普及に向けた課題
- 規制と法的な課題
- エネルギー消費の課題
- セキュリティの課題
一つずつ見ていきましょう。
普及に向けた課題
Web3.0の普及には以下のような課題も存在します。
スケーラビリティ:
ブロックチェーン技術はまだスケーラビリティに課題を抱えています。規模や負荷の変化に対して、耐えられる度合いがまだまだ低いということです。大量のトランザクション処理やデータの保存に高速で効率的な処理が求められます。
ユーザーインターフェースの改善:
Web3.0の技術は、一般のユーザーにとってはまだ扱いにくいものです。ユーザーがWeb3.0の技術を利用するためには、使いやすく直感的なユーザーインターフェースが必要です。かつて「Windows95」が登場しパソコンが一気に普及しましたが、それと似た変化が、これから起こってくるでしょう。
ユーザーがブロックチェーンやスマートコントラクトを意識することなく、シームレスにWeb3.0の機能を活用できるような環境が求められています。
規制と法的な課題
Web3.0には法的な課題も存在します。分散化されたシステムやデジタルアセットの取引は、既存の規制や法的枠組みとの整合性を考慮する必要があり、新たな法的なルールや規制の整備が求められます。
エネルギー消費の課題
一部のブロックチェーンネットワークは、膨大なエネルギーを消費するため、持続可能性の課題があります。エネルギー効率の向上や環境への負荷の低減が必要です。
セキュリティの課題
ブロックチェーン上での取引やデータの安全性は重要ですが、一部のプロトコルやスマートコントラクトにはセキュリティの脆弱性が存在する可能性があります。セキュリティの強化や検証・評価はより高い精度が求められるでしょう。
まとめ
以上、Web3.0について、現在活用されている分野から今後展開が期待される分野まで解説しました。
この記事を読んだあなたはWeb3.0のメリットは理解できたかと思います。しかし、具体的な使い道まではおそらくピンときていないのではないでしょうか。使い道がイメージできないくらい遠いところにあるのがWeb3.0の現状ではありますが、多くの人が便利さに気づいたら、普及はあっという間ではないかと思います。今後の動向に注目しましょう。
この記事を書いた人
クーシーブログ編集部
1999年に設立したweb制作会社。「ラクスル」「SUUMO」「スタディサプリ」など様々なサービスの立ち上げを支援。10,000ページ以上の大規模サイトの制作・運用や、年間約600件以上のプロジェクトに従事。クーシーブログ編集部では、数々のプロジェクトを成功に導いたメンバーが、Web制作・Webサービスに関するノウハウやハウツーを発信中。
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テキスト:加藤久佳 デザイン:大坂間琴美